[お酒の紹介]

2025年01月24日

歴史

　新政酒造は嘉永五年（1852年）、幕末の動乱期に創業されました。創業者は初代・佐藤卯兵衛で、その酒は地元で「うへえの酒」として親しまれていました。明治期には、明治政府が掲げた施策「新政厚徳」に由来する「新政」という名をいただきました。この名前には、「厚き徳をもって新しい政をなす」という意味が込められています。
　時代は移り、大正期になると四代目佐藤佐吉は経営を成功させ、息子の卯三郎を当時の酒造技術の最高峰で学べる「大阪高等工業学校」（現在の大阪大学工学部）へ進学させました。この学校は、兵庫・灘という最高の銘醸地に近く、全国の酒造関係者や大蔵省・国税庁の技師を目指す人々が集まる場所でした。
　卯三郎は在学中からその才能を発揮し、同窓生であったニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝氏と共に、「西の竹鶴、東の卯兵衛」と称えられるほど学業成績が優秀でした。後に五代目卯兵衛となった卯三郎は帰郷後、家業に従事し醸造の指揮を執るとともに、酒質向上のため研究に尽力しました。
　その努力の末、五代目卯兵衛は「六号酵母」（きょうかい6号、別名：新政酵母）を自身の酒から分離することに成功します。この酵母は、日本酒の歴史に名を刻む重要な発見となりました。

特徴

　新政酒造の象徴ともいえるのが「生酛造り」です。これは手間と時間を要する古来の製法であり、自然の乳酸菌を活用して醸されます。この手法によって、酒本来の深い旨味と軽快な酸味が引き出され、新政の酒に独自の個性を与えています。
　また、新政酒造は「六号酵母」の発見蔵としても知られています。この酵母は1935年、新政の酒から分離され、日本醸造協会の標準酵母として登録されました。六号酵母を活かした日本酒は、フレッシュでフルーティな香りと、爽やかな酸味が特徴で、多くの愛好者を魅了しています。
　さらに、同酒蔵は斬新なブランド展開を行い、伝統と現代的センスを融合させています。代表的なシリーズには、六号酵母を用いた「No.6」、自然派の原料を追求した「Colors」、そして生酛造りの魅力を堪能できる「ラピス」などがあります。これらの日本酒は、美しいボトルデザインとともに国内外で高い評価を得ており、「酒は芸術である」という蔵元の信念を体現しています。
　加えて、新政酒造は環境保全とサステナビリティを重視した取り組みを行っています。地元・秋田県産の酒米を使用し、契約農家と連携して無農薬・有機栽培を積極的に導入。酒造りを通じて地域と自然への配慮を大切にしています。

ラインナップ

1. No.6シリーズ
　新政酒造を象徴するシリーズであり、六号酵母の可能性を追求したライン。品名の「No.6」は、六号酵母に由来しています。透明感のある味わいとフレッシュな酸味、フルーティな香りが特徴です。
　●No.6 S-type: シルキーで上品な味わい。シリーズのスタンダード。
　●No.6 R-type: 華やかな香りと軽やかな酸味が楽しめるタイプ。
　●No.6 X-type: 深みのある味わいと複雑さを兼ね備えた特別な一品。
　●No.6 A-type: 熟成を加えた限定タイプで、濃厚な旨味が特徴。
2. Colorsシリーズ
　「自然派日本酒」をテーマに、無農薬や有機栽培の酒米を使用したシリーズ。全て純米酒で、生酛造りによる複雑な味わいが楽しめます。
　●ラピス（Lapis）: しっかりとした酸味とコクのある仕上がり。
　●ヴィリジアン（Viridian）: 爽やかな香りと軽快な味わい。
　●エクリュ（Ecru）: 柔らかな口当たりと上品な甘味。
　●アース（Earth）: 力強い酸味と米の旨味が調和したタイプ。
3. Private Labシリーズ
　蔵元の挑戦的な試みを反映した実験的なシリーズ。毎年異なるテーマで仕込まれ、少量生産でリリースされます。希少価値が高く、コアなファンに人気です。
4. 夜明け前（Before Dawn）シリーズ
　最高峰の品質を追求した、贅沢な特別純米酒シリーズ。新政酒造の酒造りの到達点を示す一品で、厳選された原料と高度な技術が結集されています。
5. Essenseシリーズ
　新政酒造のアイデンティティを際立たせる、限定的で特別なリリース。蔵元の哲学や信念が反映される個性豊かなラインアップです。
6. 限定・季節商品
　●貴醸酒: 甘味が特徴的な特別製法の日本酒。デザート酒としても楽しめます。
　●雪月花: 季節に合わせた限定リリース商品。柔らかな香りと味わいが魅力。
　●中取りシリーズ: 酒造りの過程で最も良い部分だけを使用した贅沢な日本酒。
7. ヴィンテージシリーズ
　新政酒造の技術と情熱が注がれた、長期熟成酒のシリーズ。時間をかけて熟成された日本酒は、奥深い味わいと香りが楽しめます。